何もしないということ

 

こころのもちよう』では、就職して間もない頃の私について書きましたが、少し遡ってみると驚きの事実がありました。

21歳の頃、学生だった私は一つだけ決めたことがありました。

それは「何もしない」ということでした。

 

なぜそんなことを決めたかというと、暇だったのです。

暇だったので何かしようと思いましたが、何かしようと思うほど逆効果になるような気がしてきました。

そしてこう思いました。

「このまま何もせず1年ほど暮らした後、自分にどんな反動が起きるんだろう」

 

要は、実験だったんです。

『反動』が起きなければ、その程度の人間でしかなかったと思うだけのこと。

その一点です。

自分に賭けていたというのか、ネガティブな感覚は全くありません。

 

それから30年近く経ったある日、仙台にいた私の所にすぐ上の兄が来て、明日『あわうた』というものに参加するというのです。

面白そうなので、私も一緒に行きました。

そこで『あわうた』を歌う方が、私と向かい合って座り歌い始めました。

一通り歌った後に引き続き、私のことを話し始めていました。

それを録音し、その場で速記されたものを受け取りました。

 

お話しが終わった後その方は少しびっくりされた様子で、こう私に話されました。

「何も考えず、何もしないでいてくださいと言っています。これは凄いことなんですよ」と。

「あれをしなくちゃ、これをしなくちゃなんて、一切考えないようにしてください。ただそのままでいいと言ってます。

そうすれば多くの人の助けとなる」と。

 

感想を聞かれ、私は「やはりそうかと思いました」と答えました(笑)。

今、手元にある速記には、こう書いています。

 

大きなる木なるぞ

枝を伸ばし 葉を繁らせて 皆々がその木に集まり

心おだやかに なすところと なりて下されよ

 

ただ ただ ご自分の思いのままに すくすくと伸び 繁りたれば

皆々の助けとなりましょう

 

平成二十一年八月八日

 

それ以来、私は何もしない人生を送っています。

その時一緒に行った兄は、3.11で亡くなりました。

いろいろありますが、何もしないようにしています。