天使の楽天性と人間の力を併せ持つときがきた

このアジサイ、友人からいただきました。この二、三日、雨の中のアジサイが魅力的で心の中で「部屋にアジサイを飾りたいなあ」「歩けない父に見せてあげたいな」と思っていました。父は、花が好きなのです。そしたらなんと、このアジサイをもらい、びっくり!天使が彼女にささやいてくれたのでしょうか。こんなふうに天使は、しばしばやってきてくれるように感じます。

今年も13年目となる「平和を祈る演劇祭」に参加します。今年は、「見習い天使」の再演をします。

このお芝居は、生きるのが嫌だという主人公に3人の天使がもう一度生きるように説得する話です。その中の一人、天使のボスは、3・11で家族を失い、一人だけ生き残ったあきらのために、何度もシリアのアレッポから駆けつけます。なぜって、天使は戦場に行っても実際には何もできずに涙を流しているだけ。肉体をもつ人間こそが目の前の事象に突入し、かかわれるのです。ただし、天使はあきらめませんが、私たち人間は直ぐあきらめます。なので、天使は心配で何度も駆けつけるのです。直ぐあきらめてしまうのはきっと小学校から比較され、競争させられて、もうこれ以上、挫折感という痛みを味わいたくないからです。この芝居では天国と地上のはざまで天使たちが、虚無を超え人間の力を思い出してほしいと、あの手この手を使います。地上のものを動かせるのは人間ですから、神頼みしている場合ではありません。一緒に働こう、と天使のボスはいいます。そして、お願いします、と、人間に頭を下げます。

10年ほど前に書いた作品ですが、初めは、自殺防止を願って書きました。その後、3・11があり書き直しました。激動する時代に天使の数が足りないという設定にしました。一人でも多くの人が人間のまま、見習い天使になってほしいと思い、書きました。

先日の都議選の結果を見て何かが変わり始めたと感じました。ちゃんと私たちには大切なものを守るための力があるんだと、希望を感じました。たとえ理不尽に一方的に数に任せて国会が人のいのちを軽んじるほうに動こうとも、私たちは天使の楽天性を保ち、虚無に落ちますまい。

これからも天使の楽天性をもって、人生最後の一日まで本来の人間の力を発揮しようとする人びとの出現を願って、私たちは演劇を創りたいと思います。リアクション研究所は、心から嬉しく、しなやかで粘り強く、未来を守るために仕事する基になる「天使のリアクション」を世界に広げるのをミッションと定めています。

音楽劇「見習い天使」は、今月の21日から22日の二日間、西東京市の保谷こもれびホール・小ホールにて公演します。