高島元子さんへのリレーインタビュー

SFC政策・メディア研究科研究員の稲垣 円(みつ)さんからのリレーインタビューは、アロマコミュニケーションカウンセラーの高島元子さんです。

高島さんは30代後半に体調を崩され、その時にアロマセラピーと出会いました。その後しばらく趣味で続けていましたが、アロマセラピーが多くの人の幸せや健康に寄与できることを実感しサロンを開業されました。

アロマのもとになる植物が、如何に私たち人間にとって大切なものか。
この地球で生まれ、受け継がれ共存しているということがどういうことなのか。

高島さんのお話しは“普段何気なくそこにある奇跡”を、私たちに想い出させてくれます。(聞き手:昆野)

――アロマコミュニケーションカウンセラーというお仕事をされていますが、まずアロマセラピーとはどういうものですか?

高島元子さん:アロマは芳香、セラピーは療法という意味で、香りを使ってリラックスしたり、自然治癒力を引き出し、健康維持や美容にも寄与します。とても幅が広く奥行きがあって、香りによって自分の深層心理に向き合うことができます。ですから私は、アロマセラピーによって「ホンモノの自分」を取り戻すお手伝いをしているんです。
多くの人に「素の自分を取り戻す」ことで、心から笑顔になって楽しく過ごしてもらいたいと思っています。そのために、ご本人にとって気になる香りや惹きつけられる香りを見つける手伝いをしています。

――「素の自分を取り戻す」いいですね!どのような香りですか?

高島元子さん:精油(エッセンシャルオイル)という、植物がもつ揮発性の芳香物質(芳香分子)を水蒸気蒸留法などにより取り出したもので、成分の添加や除去を一切行っていないものを薄めて使います。また精油をブレンドすることで新たな香り、印象に変化するので、ブレンドができるようになれば精油の世界はさらに広がっていきます。
古代エジプト時代、人々は植物の作用や解剖学の知識を有していました。ギリシア時代、医学の父ヒポクラテスが病気を科学的にとらえて西洋医学の基礎を作り、香油でのマッサージなどを記録に残しています。同じ時に約600種の香料植物がまとめられました。アレキサンダー大王が東方遠征をおこなうことによりスパイスやハーブなど東西交流がおこなわれました。このような歴史が、イスラム、中世ヨーロッパ、そして近代へとつながっていったのです。ハーブやスパイス、芳香植物の歴史を語るだけでも多くの時間が必要になるほどです。

精  油

――とても奥が深そうですね。何がきっかけでアロマセラピーと出会ったんですか?

高島元子さん:私は30代後半に、残業が増えたことで外食も増え睡眠不足が重なり、回復する力が落ちて体調を崩してしまいました。その時にハーブを使った料理が、カロリーを抑え健康にもいいよと教えてもらい、始めてみたことがきっかけです。その学校ではアロマセラピーも学ぶことができ、私はアロマに魅せられてしまいました。香りを生活に取り入れることで、自分の健康を取り戻せるということを30代後半に知って、それからずっと趣味でやっていました。

その後、JAの中で家畜の配合飼料を担当していた時にBSE(牛海綿状脳症。2001年発症)が起きてしまい、その渦中ものすごいプレッシャーの中で残業をしなければならなくなりました。その時ひどいめまいがして、とても心が平穏な状態で仕事を続けられる状況ではなくなりました。残業が続けば心身ともにおかしくなってしまう。それまで私なりに責任感をもって仕事をしてきたけど、結局自分の仕事は会社の中の歯車でしかないと気づき会社を辞めました。40代後半のことです。
そして2007年に、ChezClara(シェクララ)というアロマセラピーのサロンを始めました。シェクララは、クララの部屋という意味ですが、アルプスの少女に出てくるクララがハイジと出会いアルプスに行って歩くことができたという夢をかなえたことを指します。
しばらくは他の仕事と兼業していましたが、兼業していると自分の中の軸がぶれてしまい、アロマセラピーが片手間になり、また組織の歯車になりかねないと自覚をしたため、アロマコミュニケーションカウンセラー一筋に生きることに決めたんです。

カウンセリング中

――アロマセラピーの何がそこまで、高島さんを魅了しているのでしょう?

高島元子さん:植物の叡智を感じるからです。

――植物の叡智ですか?!

高島元子さん:そうです。誰にも命令されずに、葉を広げて太陽を浴び、花を咲かせる植物。そしてその恩恵を味わい口にできる幸せや美容や健康につながる幸せを、心の底から感じさせてくれるんです。
植物は光合成を繰り返し、エネルギーを蓄え、子孫を残しています。植物のそういう生きざまは私に、“限りあるいのちを大切に生ききる=生きる力”を教えてくれました。そして、今はそれを強く意識することができます。すべて植物のおかげですね。

――素晴らしい感性ですね!以前、木内鶴彦さんという何度も臨死体験をされている方が、本の中で「人間は植物のために生きている」と書いていました。その時私は、なるほどなあと思いました。
この地球において我がもの顔で生きている人間の存在意義が、植物のためにあるという訳ですから、ほとんどの人はそれを受け入れられないでしょうね(笑)。
偶然その少し前に、私は“人間が地球に存在している意義は何なのか”を考えていました。その結果一つだけ見つけることができたのは、酸素を吸って二酸化炭素を吐くということでした(笑)。
でもそれ自体、ガイア(生命体としての地球)にとってなくてはならない植物との相互作用であり、ガイアの循環機能として大きな役割を担っています。高度な知能をもっていると思い込んでいる人間にとっては、このような説明では納得できず、収拾のつかないことになってしまいますが(二人大笑)。

高島元子さん:面白いですね。でも確かに、人間に及ぼす植物のエネルギーは素晴らしいですね。人が生きていくうえで、植物との関わりを積極的に持つことが大切だと思います。植物は光合成により、有機化合物を作ります。人のエネルギー源となる炭水化物・脂質・タンパク質を生合成し、さらに人の生理機能を正常にするビタミン・ミネラル類なども生合成してくれます。
しかも自然界の植物の多くは、見た目が同じようでも様々な環境の変化にも備え、生存するために遺伝的な多様性を有しています。子孫を残すために多様性は必須なんですね。

植物は人の身体を恒常的に維持するために役立ってくれています。精油は植物のどの部分から採油しているかで、様々な働きが特徴づけられます。幹であれば、水分や養分を吸い上げている、だから幹から採油する精油には「流す」機能があります。花であれば、昆虫を引き寄せたりしますので、女性性を助けてくれるなどの働きもあります。
身体だけではなく、心にも働きかけてきます。香りによって、心が穏やかになったり、また元気が湧いてきたりしますよね。こういった別の魅力も積極的に伝えていきたいと思っています。

植物に近づいていくといろいろと教えてくれます。
じっと黙って咲いているような草花が、年によって花の数や実の付き方が違ったり、時には咲かないこともあります。その時々の自然環境の中で自分を守っているのでしょう。そう気づくと、私は植物の前では頭が下がり、植物の恩恵を享受できることを幸せだと感じ、できるだけ元気でいてほしいと願います。
共生共存って相手の存在を称えることから始まっているのでしょうか。植物の恵みを魂レベルで受取りたいと思っています。

山梨農場

――植物から学ぶ。本来の人間の生き方や存在意義を知る手掛かりが、そこにあるように思えてきますね。
最近になって、『60歳からのフランス式アロマセラピー研究会』というものを立ち上げられたようですね。60歳からということにどのような意味があるのでしょうか?

高島元子さん:ご存知のように60歳というと“赤いちゃんちゃんこ”還暦です。一昔前、60歳まで生きることができたことが、大変おめでたいこととしてお祝いしてきました。生まれ変わりとして、誕生した赤ちゃんに由来して、赤いものを身につけたそうです。私自身、ここまでの人生に感謝しています。
私が考える60歳からの生き方は、周囲を優先してきた人生ではなく自分を最優先する。若い時のように、すぐに元気になれなくてもゆっくり元気になればいい、日常の当たり前の生活を丁寧にする、それは植物の香りや力に助けてもらえる、そんな思いから『60歳からのフランス式アロマライフ研究会』を立ち上げました。
また日本におけるアロマセラピーの広がりはいわゆる資格ビジネスとして広がってきましたが、私はそれに対して“資格取得ではないワクワクするアロマ、自分が健やかで美しく輝くためのアロマ、身近な誰かのために役立てるアロマ”を心がけています。
アラ還の女性にも、フランスマダムのようにエスプリを効かせたさり気ないおしゃれで、好きな香りを纏う60歳を一緒に目指しませんか、という意味も込めて(笑)。

研究会設立セミナー集合

――フランスにご縁があるんですか?

高島元子さん:姉夫婦が暮らしています。ご主人はフランス人で、私は何度もフランスに住む姉夫婦の家に滞在しましたが、フランスの生活に学ぶことがとても多いと感じています。彼らはとても丁寧でシンプルな暮らしをしています。野菜は、地域の農場(ハンディキャップのある方も従業員)と契約をして、定期的に届く地場の野菜を楽しんだり旬を味わっています。
そして私のフランス好きの理由は、ずばり「農業国」だからです。
農業を大事にしている、それって「命」を大切にしているということと同じことだと思うんです。そして、フランスでは「食事」が大事にされています。マルシェに行けば理由がわかります。もちろん、ファーストフードもあるしレストランもありますが、何よりも家庭での食事を大切にしています。家族や友人、親戚が同じ食卓を囲んでワインを片手にゆっくり楽しく味わいながら食事をする。 これが私のフランス好きの理由です。
食べることは生きること、生きるために食べる、食べることが大事にされている国。それがフランスです。

フランスある街のマルシェ

――ところで、どんなお子さんでしたか?何か夢はありました?

高島元子さん:子どもの頃は世田谷に住んでいましたが、夏休みや冬休みになると埼玉にある母の実家にいることが多く、自然の中での暮らしが子どもの頃の私にとってとても貴重な体験になっていると思うし、その体験は私の身体の中に記憶として残っている感じですね。とても楽しかったんですね。
子どもの頃の夢は、何となく幼稚園の先生になりたいとか、学校の保健室の先生になりたいとかという感じでした。あまりはっきりしたものはなかったですね。一応、教員免許はもっていますが、結局学校の先生にはなりませんでした。

――子どもたちを見ていてどう思いますか?

高島元子さん:ここ国分寺駅周辺でも小学生の塾通い、親の送り迎えを毎日のように見かけます。それを見ていると、幼い頃から夜遅くまで塾通いする子どもは大変だなあと思います。私たちの時代は小学校から塾に通う子どもはあまりいなかったし、毎日遊んでばかりいましたからね。もっともっと自由に遊んで生きていいのに、制約がどんどん多くなっています。

3.11の後に被災地に行った時も、子どもたちは明るく元気に振る舞っていましたが、子どもたちの表情を見ていると大人たちのことを察してそうしているのかなと感じました。子どもはとても敏感ですからね。自分たちが明るくすることで、大人が救われることを知っているからそう振る舞っているんです。子どもってすごいですよね!
そういうことに親御さんや大人は気づかないというか忘れてしまっています。自分たちも子どもの頃は、自由に遊んでいるのが一番楽しかったでしょうし、子どもの頃の可能性は無限大にあった訳なので、それぞれの子どものいいところを伸ばしてほしいなと思います。それこそ植物のように多様性があっていいと。

――親は自分の子どものためを思い接していますが、子どもの可能性や笑顔は失われつつあると感じます。仕事と子育ての両立といいながら、疲れ切っている親がイライラして子どもと接してしまうことも多く、私の脳裏を「自己犠牲」という言葉がよぎることもあります。
子どもたちに何を伝えたいですか?

高島元子さん:「人生にあきらめないでほしい」と伝えたいですね!
志望校に入れなかったり、有名企業に入れなくても、人生いくらでもやり直しが利きます。たとえ親が良かれと思って選んだ道から外れたとしても、その時は受験や就職に失敗したと思ってしまうかも知れませんが、大丈夫です。絶望なんかしないで、何度でも何度でもやり直してほしい。決して、人生にあきらめないでほしいです。

――もう少し生きてみないと、その時々のことがどういう意味をもつのかわかりませんからね。目的はその先にあると思えれば、選択肢は増え選択の幅も広がります。私は「人生は体験」だと思っていて、人はすべてわかって生まれてきて物心つき始めると忘れてしまう。だから人生は忘れていることを想い出す作業なのかも知れません。忘れていたことを想い出すきっかけが体験なので、心振るえるほどの体験をすればするほど、人としてとても大切なことを想い出すことができるのだと思っています。

高島元子さん:すべてのものは常に変化していて、人も同じです。アロマセラピーをしているとその変化に気づきます。毎日違う香りに反応するし、1日の中でも好きな香りが違って感じることがあります。
人生で大事なことは、「自分が楽しい!」「自分がすごいと思う!」「自分の可能性は無限大」これに尽きると思うんです。
香りがあれば心がウキウキしてスキップしたくなる、それでいいんです(笑)。

――今日は、普段あまり接することのない世界に触れることができました。興味深いお話しをありがとうございました!

植物の前では頭が下がる。
植物の恵みを魂レベルで受取りたい。
そして“植物の叡智を感じる”と、高島さんは言われます。

どこからこのような感性が湧き出てくるのか不思議に思えるけれど、本当はすべての人が生まれもって備わっている感性なのかもしれません。そうすると私たちが見失い忘れてしまっているものの大切さや、多さに驚かされます。

普段、私たちが暮らす環境や見慣れている景色、私たちの身体のしくみすべてが小宇宙であり、奇跡であり、法則があります。それらは、まだ人間の手ではつくれず真似できないものばかりです。光合成も、その一つでしょう。

すべてはある。
すべては、いま、ここにある。

本来、生きる上で必要なものはすべてある。そう思えた時に湧き出てくる想いがあります。それは、多くの人が同じように感じる想いに違いありません。

見えないものに関心を抱き何かを感じることの大切さを、高島さんは想い起させてくれる人でした。

■高島元子さんのプロフィール

株式会社ChezClara代表取締役
アロマコミュニケーションカウンセラー
アロマアナリーゼインストラクター
60歳からのフランス式アロマライフ研究会主催
アロマ&ハーブサロン&スクールChezClara校長
日本フェイシャルセラピスト協会認定指導士

会社員時代、無理な働き方のために体調不良になってアロマセラピーで元気を取り戻す。その経験から2007年アロマセラピーサロンChezClaraをオープン。同時に行政の相談業務やがん患者さんの生活サポートのNPOなどで様々な悩みに向き合ってきた。自分らしさとは何かを確認する場面や未来への不安を相談する場がないことに気づく。自分と向き合うこと、自分の心が楽しいことをすれば未来への不安がなくなることを伝えるために60歳からのフランス式アロマライフ研究会を立上げ、ワクワクするアロマライフのレッスンを提供している。受講者からは「学ぶことがワクワクする」「仲間とクラスメイトの女子繋がりを感じる」「アロマの奥深さに感動」「すぐに人に伝えたくなる」などと喜ばれている。
高島元子オフィシャルブログ
ChezClaraウェブサイト
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