四股を踏む

当時小学4年生だった貴景勝が貴乃花部屋を訪れた際に、「(ライバルの)武蔵丸や曙と戦う時、どういう気持ちでしたか?」と貴乃花に質問したら、貴乃花は「四股を淡々と踏めば勝てる」と答えたそうです。

その言葉の真意を、貴景勝は「自分とどう向き合うのか」と理解して精進し続け、今場所の賜杯を手にするまで成長できたようです。
確かに、場所中のインタビューでも「自分と向き合う」という言葉を繰り返していました。

四股は、相撲の重要な基本動作。

様々な基本動作に共通している点は、地味で楽しいとは思えないことが多いですが、それだけに黙々淡々とひた向きに取り組むことで精神性が養われるのでしょう。

私は仕事について話す時、“基本動作”という言葉をよく使います。
では、“基本動作”を徹底することで何が違ってくるのでしょう。

仕事では、混沌として複雑でよくわからないと思えるようなことが起きます。
ただそれは、人によって起こり方や頻度、複雑さが異なります。
なぜ、違ってくるのでしょうか?

“基本動作”をしっかり心掛け行動している人の周りでは、大きな問題・トラブルや理不尽な出来事は起こりにくいと言えます。

つまり仕事上の物事の多くは、“起こるべくして起こっている”ということではないでしょうか。

私なりの言い方をすると、“仕事の筋”と“事実認識”によって物事が整理され、問題・トラブルが発生する前にリスク低減・回避がなされていくといった感じです。

仕事の筋は、商慣習や倫理観、社会的な意義や人間性、その仕事の目的・目標・価値などにもとづいた、本来の仕事のあり方を指します。
事実認識は、事実認識にもとづいて考え行動すること。何が起きているのか、誰が何を言ったかどんな態度をしたのかなど、自分自身が見て聞いたことにもとづいて考え行動するもの。重要なことは、“意見”と事実認識を区別することです。

仕事の筋は、“そもそも”に立ち返れば見えてきます。また“本来の目的”は何なのかを再確認すれば明確になります。
肝心なことは、惑わす要因に対して距離を置くことです。
惑わす要因は、損得勘定だったり不安や恐怖だったりするので、利害を超えた客観的な視点が必要です

どうも違和感がある。この違和感は何なんだろう。といった感覚です。

事実認識にもとづいて考え行動することは、基本中の基本です。
でも多くの人は、そこから逸脱した考え行動をしています。
起きていることと、誰かや自分が思っていることの区別をしないで、考え行動をしているということです。
これでは最善策は見えてきません。

仕事の筋を見極め、事実認識にもとづいて考え行動することで、予期せぬ問題・トラブルは自ずと回避されていくでしょう。

自分だけそのように徹底していても疲れるので、早めに組織的な基本動作として慣習化されることをお勧めします。