青沼かづま氏インタビュー(その7)

ナガノ:喜怒哀楽のうちの、「喜」の傾向についてもう少し聞かせてください。「喜」の人が才能も力もあるのにそれが生かされないのは、もったいないですね。

青沼:「喜」の人は、全体を飛躍させたり、新しい創造を生み出す役割を持った人です。それが生かされないのは全体にとって大きな損失です。
朝のドラマ「マッサン」に出演していたシャーロット・ケイト・フォックスさんと共演した堤真一さんがある番組で「彼女と一緒に仕事をして、初めてカメラがあるというのを忘れさせてくれた」と言ってました。堤さんは力のある俳優ですが、それゆえに、計算し、目論み、自分でこうしよう、ああしようと決めてしまうところがあったのでしょう。
けれどシャーロットさんは、自分が何かをしようとするより、相手を受け止めることに、つまりリアクションに集中したのです。カメラの位置がこうだから、この角度で、こうしてああしてと考えてやることができなくなるほど、シャーロットさんの心が自分に飛び込んできて、堤さんはその空気に巻き込まれてしまったのです。

カメラの位置や角度を頭に入れて動くことは、もちろん大事なことですが、それにとらわれて、相手との心のやり取りが疎かになってしまう危険があります。
見えない心のキャッチボール、一回生起の交流のリアリティー、自然に湧き上がるリアクションこそ、俳優が一番に大切にしなければならない仕事だからです。

ナガノ:自分は「できる人だ」と思うと、つい、一人であれこれやってしまいたくなる、やりたいようにやりたくなってしまいますから・・・あ、わたしのことです。振り返ると誰も後ろにいない・・・みたいな。
協力し合うこと、さらに、響きあって行動することが舞台の上で出来たらなんてうれしいことでしょうか。

青沼:どんなに力があっても一人で決め、一人でやることには限界がある。どんなに飛躍の力があっても相手の力、周りの人の力を借り、感謝して受け止めることができなければ飛躍できません。

あらゆる多様性を受け止め一緒に作り上げることが創造の原点です。