新井 梨紗さんへのリレーインタビュー

NPO法人コドモノトナリ副理事長の比嘉香里さんからのリレーインタビューは、KICK OUTインストラクターの新井梨紗さんです。

今回は新井さんのご要望に応え、久しぶりに対面でのインタビューになりました。
対面を希望されたので、ジムのトレーニングを見ながらのインタビューになるのかなと思いましたが、指定された場所は有楽町のドーナツ屋さんでした(笑)。

私はKICK OUTという言葉を、生まれて初めて聞きました。キックボクシングのような格闘技をイメージしていましたが、よくわかりません。
こういう時は、先入観なしにお会いした方がいいと思いながらも、事前情報として何かあればとお聞きしたところ、新井さんから送られてきたのは履歴書でした。

インタビューの事前情報が履歴書。
面白い方だなと思いながら、当日私は有楽町のドーナツ屋に向かいました。(聞き手:昆野 直樹)

――履歴書が届いてびっくりしました。リレーインタビュー史上初めてですね(笑)。

新井 梨紗さん:履歴書が手っ取り早いかなと思ったので(笑)。

――履歴書を拝見すると、びっくりするくらい多くの会社で仕事されていますね。業種もエンターテイメント系あり、金融系、不動産系、引っ越し屋など様々です。

新井 梨紗さん:いろいろやりましたねー(笑)。様々な業種の仕事を経験できて、おかげさまで物事を柔軟に捉えられるようになったと思います。いつも挑戦している感じなので、度胸や適応力も身に付いたと思います。

水族館でアシカトレーナー

――ご出身は群馬県の渋川ですが、専門学校の時代からずっと東京で一人暮らしですか?

新井 梨紗さん:一時期ルームシェア生活もしていましたが、基本一人暮らしですね。

――自分で収入を得ながら都心で家賃を払って暮らすって、たいへんですよね。職歴を見ると、途切れることなく退社の翌月には次の会社に入社されているので、これもまたびっくりです。何か転職のコツというか極意をお持ちなんですか?
もし極意があるなら、それを伝授するだけでビジネスができるかもしれませんね(笑)。

新井 梨紗さん:極意とか、まったくないですね(大笑)。実は面白そうな仕事を見つけては、その都度その案件を扱っている派遣会社に登録して派遣されています。
結構自分のやりたいことを選んでいるうちに、業種も多くなったという感じです。

――いろんなことに興味があるんですね。ハングリー精神を養っているんですか?

新井 梨紗さん:そんなことはないです(笑)。ハングリーでいたいとは思っていませんが、基本カラダを動かしているのが大好きなんです。
KICK OUTについてご存じないと思いますが、KICK OUTは格闘技エクササイズと言われ、音楽に合わせて楽しくやるスポーツなんです。

――音楽に合わせて・・・?サンドバックを叩いたり蹴ったりしないんですか?

新井 梨紗さん:しません(笑)。音楽に合わせ鏡を見ながらシャドーボクシングのようにカラダを動かします。

――対戦は?

新井 梨紗さん:ないです。どちらかというとエアロビのような感じです。

――エアロビ(笑)?まったくイメージが違っていました。老若男女が誰でも気軽に参加できるものなんですね。

新井 梨紗さん:そうです!お子さんから年配の方まで楽しめる格闘技エクササイズです。

子どもたちも一緒のレッスン動画(右端のカラーシャツ・ピンクソックスが新井さん)

――格闘技エクササイズ・・・、これもまた初めて聞きました。
つい5分程前に新井さんにお会いして、痩せているようでしなやかさを感じ、おとなしそうだけど芯の強さを感じています。この新井さんの奥底にあるエネルギーは何ですか?
格闘技もガッツリやられていたんじゃないですか?

新井 梨紗さん:格闘やってました(笑)。

――やはりそうですか!ちょっとした動きというか身のこなし方が違うんですよね。いつからインストラクターをやられているんですか?

新井 梨紗さん:昨年12月にインストラクターの資格を取得して、今年からやっています。

――やはり資格を取得してすぐに仕事につながっていますね。どんな極意があるのでしょうか(大笑)?
KICK OUTとの出会いはいつ頃でしたか?

新井 梨紗さん:3~4年前です。ただ、その時はあまりピンとこなかったんですよね。

――格闘の方が向いていると?

新井 梨紗さん:その時はそう思っていましたね。その後、私が通っていた格闘技ジムで偶々KICK OUTと再会して、闘う楽しさとは異質の楽しさを感じ始めました。
そして昨年の年初に「インストラクターになるぞ!」と決めて、今の師匠のところに通い始めたんです。

――格闘技をやっている人にとっては、KICK OUTは少し物足りないスポーツのように思えますが、実際にやってみないとわからない楽しさや奥行きがありそうですね(笑)。
格闘技はいつ頃から始めたんですか?

新井 梨紗さん:6年程前からです。

――それは何がきっかけでした?

新井 梨紗さん:単純に、定期的にカラダを動かしたいと思ったからです。思い立ってすぐに近所のジムに通いました。

――履歴書と照らし合わせてみると、ちょうど引っ越し屋さんを辞めた頃のようですね。何かに目覚めたという感じですか?

新井 梨紗さん:元々私はカラダを動かしていないと疲れてしまう人で、エネルギーをチャージするためにもカラダを動かしたいと思い即決しました。

――格闘、ハマりました(笑)?

新井 梨紗さん:ハマりましたね(笑)。

――打ち込めるものに出会えてよかったですね!ヘッドギアを付けて殴る、蹴る。痛くないですか(笑)?
実は、年齢を重ねて感じることの一つが、ちょっとドアにぶつかっただけで凄く痛く感じたり、打撲をすると何週間も治らないんですよね。ホントびっくりするほど治りませんね(二人大笑)。

新井 梨紗さん:大きい人や男性と対戦した時は、やはりパンチが重いので痛いですね。女性同士の対戦の場合はあまり痛さを感じることはないです。

アマチュア大会で勝利!

――カラダを動かしていないと疲れてしまうって面白いですね。根っからのアスリートというか、カラダを動かしながら生まれてきたような人ですね(笑)。小さい頃はどんなスポーツをしていたんですか?

新井 梨紗さん:小学生の時は陸上で800mをやっていて、中高ではソフトボール、専門学校で剣術を習っていました。その後社会人になって、しばらく定期的にカラダを動かしてなかったので、6年ほど前に突然ジム通いを始めました。

――定期的にカラダを動かすことが、本来の自分を取り戻すきっかけになったようですね。その後5年程経ってインストラクターになり、「自分のやりたいことと生業(なりわい)」が重なってきた感じですね。

新井 梨紗さん:そうですね。まだ生業という実感はないですが充実感が違いますね。目標としてはインストラクター1本でいきたいですが、一気には難しいので少しずつ割合を高めていきたいです。

――いいですね!
私はサラリーマン時代に、ほとんどのサラリーマンが本来の自分と出会えずに諦めたように仕事を続け、自分にとっても会社にとってもつまらない日々を送っているように感じていました。今でもサラリーマンの世界は変わっていないのではないかと思います。
だから新井さんのように「やりたいことを生業に」して、多くの人たちに、いのちが輝くような人生を送ってほしいなと思っています。そういう人が一人でも増えると、社会はググっとより良い方向に向かいますから。

新井 梨紗さん:「やりたいことを生業に」、いいですよね(笑)!
インストラクターになろうと思って生きてきたわけではないですが、これが本当に自分がやりたかったことなのかもしれないとか、私はこんなことをやりたかったんだと思えることと出会うって、やはり何かのご縁なんでしょうね。
時間が掛かったような気がしますが、コロナになって世の中が大きく変わっていなければ、もっと時間が掛かったかもしれないし、出会うことはなかったかもしれません。

――新井さんの意識が、「やりたいこと」に向いていたということだと思います。もし「やりたくないこと」に向いていたら、今感じているような縁を感じる出来事は起きていなかったでしょう。
なぜなら、”ありがたみ”を感じることがないからです。
世の中では今でもコロナ禍と平気で言っていますが、禍(わざわい)と言い続けていては意識が良い方向に向かないですよね。敢えて私はコロナ機と言っていますが、新井さんはコロナを機会と捉えて好機を呼び寄せてきたのだと思います。
新井さんの中からにじみ出てくる芯の強さが、そうさせているんじゃないかと思いますね。
ところでインストラクターの資格はどこで取ったんですか?

新井 梨紗さん:資格は元ムエタイ世界チャンピオンで、私のKICK OUTの師匠である岡田敦子さんのところで取得しました。この方は、格闘技をやっている人はみんな知っている有名人です。商標登録もしているので、その方から資格を取らないとKICK OUTを名乗れません。

祝 資格取得!

――なるほど。新井さんの夢は、自分のジムをもつことですか?

新井 梨紗さん:ジムをもつというよりも、場所さえあればどこでもKICK OUTができるのが理想です。実際私の周りでも、沖縄や小笠原などに行ってインストラクターをしている人もいます。呼ばれて行ったり、旅行先の知り合いと企画するなどいろいろです。

――旅をしながら仕事をする、理想的ですね。執着しない生き方につながりますからね。私もそうしたいなと思っています!
どんなお子さんでしたか?

新井 梨紗さん:割とおとなしい子でした。今でもそうですが目立つのが嫌いなので(笑)。

――中学・高校でソフトボールをやられていたようですが、群馬は全日本の上野投手もいますね。何か伝統のようなものがあるんですか?

新井 梨紗さん:健大高崎という強豪校があるんです。

――野球も強いですね。

新井 梨紗さん:私がいた時はソフトがメインで、野球部は隅っこで練習していましたね(笑)。

――新井さんは別の高校でしたが練習は厳しかったでしょうね。ソフトボールは塁間の距離が短いので左打ちに変える人が多いですが新井さんは?

新井 梨紗さん:途中から左に変えました。

――足が速かったんですか?

新井 梨紗さん:それよりも長距離バッターではなかったので、半強制的に左に変えさせられたという感じですね。

――守備は?

新井 梨紗さん:レフトです。

――ライン際の打球は、かなり切れるんじゃないですか?

新井 梨紗さん:左バッターの打球はどんどん切れていくし、ソフトボールの球は落ちてからバウンドが変化するのでそういう難しさがありますね。

――高校生のピッチャーのボールはかなり速いでしょうね。

新井 梨紗さん:速いですね。

――野球やっている人でも打てないっていいますね。

新井 梨紗さん:野球よりもピッチャーとの距離が短くて、速いし浮き上がってくるので打てないですね。

――上野さんで思い出したんですが、2年程前にNHKの番組を見ていたら、上野さんとジャイアンツの菅野投手、ソフトバンクの千賀投手が春先の合同自主トレをしていました。
何をしているのかなと見ていると、トレーナーが菅野投手にフォームの指導をしているんです。私にとっては信じられないことで、一流のプロアスリートがコーチではなく外部のトレーナーにフォーム改造の指導を受けるってどういうことなのかと。
しばらく見ていると、元々上野さんのトレーナーをしている方らしく、上野さんが千賀投手に声を掛け、菅野投手も練習に加わったようです。
その年の菅野投手は、セットポジションから腕を大きく右に移動させてから足を上げる、独特のフォームで好成績を残しました。びっくりしましたねー。

新井 梨紗さん:私も整体に通っていますが、格闘技の先生から指導されたフォームでどうしてもできないフォームがあると整体の先生に相談します。そうすると、今の私のカラダの状態はこうだからそういう動きをするのは難しいと言われます。
そして、そのフォームができるようになるために、まずこういう動きをした方がスムーズにいくよと指導されます。段階的に目標に近づけていくアプローチ方法です。
トレーナーからのアドバイスで気づくことや修正できることが結構あります。
結局、人のカラダはすべて違うので、同じことをやる場合でもアプローチ方法はいろいろあるんですよね。

――なるほどですね!それぞれの人生には、それぞれの道がある。同じ道はないということですね・・・(ふむふむ)。
プロ野球のコーチは自分の経験と技術的な知識をもとにアドバイスしますが、それに対してトレーナーの場合は一人ひとりのカラダの違いや状態に応じて、カラダの動かし方や最良のフォームを考えることができるんですね。納得です!
ところでメジャーリーグの大谷選手の試合はご覧になりますか?

新井 梨紗さん:あまり観ていないですね。

――大谷選手の活躍を見ていると、信じられないようなことが起こっているなと感じます。いつも私のアタマをよぎる言葉があるんですが、それは「大谷を見てから死ね」という言葉です(笑)。「ナポリを見てから死ね」とゲーテが言ったそうですが、私の場合は「大谷を見てから死ね」ですね(アハハ)!
私たちは、どのような時代を生きているのか分からない。なかなか時代認識というものをもつことは難しい。でも大谷選手のような百年に一人か数百年に一人の逸材を、毎日のように見ている私たちは凄い時代に生きているといえます(笑)。

一方で、戦争が起きています。そして誰もそれを止めることができず、誰も人道支援や人命救助すらできない。後方支援する国々の武器によって、戦争は長引き、戦況は出口の見えない状況に陥っている。そういう情けない、悔しい、馬鹿げた時代に私たちは生きています。
でも、そういう世の中にあっても、新井さんは「やりたいことを生業に」することができた。それって、やっぱり凄いです。
ところでKICK OUTについて、どんなことを知ってもらいたいですか?

新井 梨紗さん:格闘技をやっている人もやっていない人も、誰でもできるのがKICK OUTです。
初めてやる人にもわかりやすいし、長年やっている人も体力を維持できるので、どんな年齢やレベルの人でも同じことで楽しめるところがいいですね。
さらに、コンビネーションをつくる時に実践で闘えるような組合せを考えることで、適当にパンチを打つのではなく、このポイントではここをこのように気をつけた方がいいといった、エクササイズとはまったく違う実践的な学びになります。

――子どもたちには、踊るように楽しんでもらいたいですね。大人には、会社や家庭を忘れ健やかな汗を流して、頭の中が真っ白になる場にしてほしいです。そうすれば、世の中の理不尽な争いや陰謀のようなものは薄れていくでしょうから。
大人も子どもも、心のはけ口がなくなるととんでもない行動をしてしまうので、理屈抜きにKICK OUTっていいかも(笑)。

新井 梨紗さん:そうですね、KICK OUTがそういう場になれたら嬉しいですね!とにかくレッスンをすると心身がスッキリします。日々、リセットできる感じがします。
これ間違いないですよ、私自身がそうですから(大笑)。
確かに、心身を日々リセットしながら生きるっていいですね。身も心も清らかになっていきます。

――脳トレにも良さそうですね(笑)!

新井 梨紗さん:コンビネーションを覚えてもらうだけでも、とってもいいと思います。格闘技では、例えば右腕が利き腕の場合オーソドックスと言い、自ずとオーソドックス中心のコンビネーションになりますが、KICK OUTは利き腕に関わらず左右どちらのパンチも出します。その人の普段の動きと反対の動きを取り入れるので、凄くアタマを刺激してくれますね。
特に高齢の方には、「これ脳トレに効くね!」と喜んでもらえます(笑)。

――「やりたいことを生業に」することで、人に喜んでもらい、自分も悦びを感じる。本来このように連鎖・循環していると思うんですよ。
楽しんでいる人の周りには、楽しそうな人が集まります。
やりたいことを生業にすることで、おカネをもらいながら自分もクライアントも他の人にも悦んでもらえる。
とことん楽しくやれば、そういうポジティブな連鎖が生まれます。
起点は自分。自分の意識と意志ですね。

新井 梨紗さん:意志あるところに道ができる。最初は手探りで確信はもてないかもしれないけれど、意志をもってやり続けることで実感が湧き、確信がもて、道が開けていくように思います。
コロナが終息しない中で、信じられないような戦争が起きています。
これから世界はどうなるのか、日本はどうなるのか、考えても見通せない状況です。
結局、自分はどうしたいのか。
いつも内なる自分に問い続け、「これでいい」と思えることをやり続ける。
それが、不確実で答えのない時代を生きる術(すべ)だと思います。

――そういう固執しないところに、しなやかな強さを感じます。
新井さんのように、自分を信じて「やりたいことを生業に」する人がどんどん増えてほしいですね。それだけで社会は活性化されていきます。
今日は身振り手振りのコンビネーション混じりの会話がとても楽しかったです。
ありがとうございました!


女性性の中に潔さを感じるとはこういうことか。
新井さんとお話ししていると、そういう想いが湧いてきます。

カラダを動かしていないと疲れてしまう、世の中にそういう人がいたんですね(笑)。
バリバリ体育会系の新井さんは、多種多様な仕事や職場で揉まれ、東京都心で一人暮らしの生活に揉まれ生きてきたのだと思います。

経済的な格差や理不尽さ、孤独感を抱くことも少なくなかったと思います。
目標や希望を見失うこともあったでしょう。

今、日本人の9割近い人が将来に不安を感じているといいます。コロナ以前は7割以上といわれていたので、約2年半の間に、将来に漠然とした不安を感じ生きている人が一気に増えたことになります。

そういう混沌とした不安が増殖する世情の中で、新井さんは自ら機会を創り、チャンスをものにした人です。そこにあるものは努力や貪欲さとは異質の、自分と向き合い素直に生きる意志と姿勢だったのではないかと思います。

自分はどう在りたいのか。
その問いと意志と行動の延長線上に、「自分のやりたいことと生業」が重なってきたように感じます。

新井さんは、都会の喧騒の中にいても、凛と佇んで生きる人でした。



■新井 梨紗さんのプロフィール

群馬出身。ドルフィントレーナーを目指して上京。専門学校卒業後、千葉と都内2か所の水族館で海獣トレーナーとして活動。
その後、ご縁があり「何の仕事がしたいか?」ではなく「どう在りたいか?」を考えるきっかけをもらい転職。様々な仕事を通していろんな人と出会い、考え方を知り「居場所づくり」がしたいと思うようになる。また、じっとしていられない性格もありKICK OUTとの出会いから岡田敦子先生の生き方に憧れインストラクターを目指す。
現在は【エネルギーチャージ&リフレッシュの場】としての役割を担えるようなレッスンを目標に活動中。

<リンク先>
・Instagram:KICK OUTトレーナー リンボー

・LINE

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